世界で一番可愛子ちゃんのふくへ
「ふくっ おいでっ」
いったい俺はこのセリフをこれまで何万回口にしただろうか
その度にお前は決まってキラキラと輝く笑顔で即座に駆け寄ってきては俺の側にオスワリした
どんな時も俺の一挙手一投足を見逃すまいと静かに見つめ続けた
どんなに小さな声も聞き逃すまいと常に聞き耳を立て俺に注意を注ぎ続けた
俺はお前のことを心の底から愛していた
そしてお前はその何倍も何十倍も俺のことを愛してくれていた
それは痛いほど伝わってきた
お前の存在は我々家族を全てのものから護り 繋ぎ止め 助けた
［ふくがいる］
日々の暮らしはその安心感と幸福感に満ち溢れていた
賢く ひたむきで 健気で それでいてちょっぴり意地っ張りでデリケート
スレンダーで美人なレディーだった
たまらなく愛しい存在だった
世界中の人に自慢したい存在だった
「ふくっ おいでっ」
「ふくっ おいでっ」
「ふくっ おいでっ」
「ふくっ おいでっ」
いったい俺はこのセリフをあと何万回口にするのだろうか
「ふくっ おいでっ」
お前がこの世を去った今でも 俺は毎日毎日何十回も心の中でお前の名を呼んでいる
なぜかって？
姿形は見えなくともいつでもお前は俺の心の中にいるからだ
そっちでの暮らしはどうだい？
聞くところによるとそこは気持ちのいい風が吹く草原だそうだね
全ての痛みや苦しみから解放されるそうだね
沢山の友達と楽しく遊んで暮らせるそうだね
本当にそうだったらいいなぁ
みんなが言ってることが本当だったらいいなぁ
もうチャオには会えたのかな？
うちではお前の方が先輩だったけどそっちではやつの方が先輩だ
ちゃんと言うことを聞いて色々教わるんだぞ
しばらくはお前を抱きしめることも撫でてやることもできないのはとても寂しいことではあるけど俺はもう悲しまないよ
だって また必ず会えるから
俺がそっちに行った時は絶対にお前を見つけ出すよ
「ふくっ おいでっ」
「ふくっ おいでっ」
「ふくっ おいでっ」
大きな声で呼ぶからな
何度でも叫び続けるから
だから俺の声が聞こえたらまたとびきりの笑顔で駆け寄ってきてくれよな
だからどうか
その日が来るまで待っていてくれ
ふく
ありがとう
愛してるよ
