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ふくのこと10

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世界で一番可愛子ちゃんふくへ



七日目の朝を迎えたよ


もちろん毎日の散歩は続けてるぜ

↓↓↓

ふくのこと9 のつづきな




結局のところ 当たり前だけどお前はシッポを振るどころかまばたきすらしなかった

 

ただただヨガマットの上にまるでぬいぐるみのように横たわっているだけだった


触って温度を確かめるまでもなくすでにそこには命というものが感じられなかったし 体はあってもお前そのものはもうここにはいないということが一目でわかった

でもね


わかっちゃいたけどお前を撫でずにはいられなかったよ

だから頭も顔も耳もお腹も背中もお尻も脚もシッポもいろんなところを撫でまわしたさ

 

毛並みの方向にはもちろん 時に毛の向きに逆らって撫でもした


肉を感じるよう少しだけ強く握ったり皮を軽くつねってみたりもした


何をしても応えてくれないなんて初めてのことだから俺はその後何をしていいのかわからなくなった


だから仕方なくまた最初からやり直したよ


そうやって全身いたるところを撫でまわした


だっておかしいじゃん


今までこんなことなかったじゃん


何度も何度もやり直したけど相変わらずお前は目を開けたまま寝転んでるだけ


息すらしてないんだから




それがどのくらい続いたのかは今となっては記憶がない


でもある瞬間 急に現実に引き戻されたんだ


ずっとこうしてはいられない って


集にはなっちゃんからの受け入れ難い電話の少し後 氷と花を調達しておくよう連絡はしておいた


棺代わりのカラーボックスにチャオの時と同様 ロックアイスの袋をぎっしりと敷き詰めその上からバスタオルを被せた


「冷たかろうが我慢してくれよ」


心の中でそう伝え即席の棺桶に収めるためヨガマットとお前の体の間に手を差し入れた瞬間 俺の中で何かがぶっ壊れた


数時間前 電話の向こうのなっちゃんがそうだったのと同じ大きな声で泣いた


おそらく前の通りはもちろん 両隣の家の中にすら聞こえたであろう大声でだ


涙と鼻水が一緒になったものがお前の着ているグレーのTシャツをみるみる汚していくのを知りつつも御構い無しでそのままひと思いに強引に棺に移そうとした


でも腕に全く力が入らず持ち上げることはできなかった


抱き上げればお前の体にはもう命がないことを絶対的なものと確認することになる


棺に移せば今日起こった出来事をこと全てを受け入れることになる


そう思ったら抱え上げることはできなかったんだ


俺は腕を差し入れたまま少しの間息を整え 再度渾身の力を込めてお前の体を持ち上げようとした


やはり同じだった


自分でも知らなかった体のどこか奥底の 実際には存在しない部位からとてつもない質量の何かがマグマのように吹き出ては一瞬で全身を巡るのを感じた


自分じゃない誰か  知らない男の野太い声が俺の喉を通して大量に発せられた


さっきと同じように目と鼻からは止めどなく液体が滴り落ちお前を汚した


三度目でやっとお前の体をヨガマットから少しだけ浮かすことに成功した


でも 俺の中のマグマがその後の作業を拒み結局は位置が少しだけズレただけにとどまった


四度目にしてやっとのこと俺は自分がしようとしたことを追行できた


体の周りに花をばら撒き その後様子を見ながらバランスを取った

大好きだったオヤツはなっちゃんが入れた

お前の名前と俺の電話番号が記された首輪
かつては鮮やかな赤だったけど月日と共にいい味に変色したこいつはもしもお前が迷子にでもなった際 確実に俺たちの元へと帰れるようになっちゃんのアイデアでオーダーしたものだ

てんちゃんは絶対に理解していたと思う

彼女が我が家にやって来た時 すでにお前はいて たった一歳しか違わないはずなのにまるでお母さんのように甘えていたし その関係はずっと続いていたからな

グッと顔を寄せ匂いを嗅いだりペロペロと舐めたりする姿は一旦は落ち着きかけた俺となっちゃんに再び涙を呼び戻した
冷たい氷の上に寝かせざるを得ない申し訳なさからなるべくお前が寂しくないよう少しでも華やかに飾ろうと工夫した
その後やはりチャオの時と同様 俺は外に出て毎日散歩で歩いた空き地に無造作に勝手に生えてるミントの葉っぱを千切ってきて棺の中にばら撒いた

ここでようやくお前が少しだけ安心してくれたように俺には見えたんだ






お前が息を引き取る最後の瞬間は集の腕の中だったと後から聞いたよ

前の日からオシッコが出なくなってお腹が張っていたことはもちろん俺も知っていた

それをあの日 病院から帰ってから集は長い時間かけてマッサージしてやってたんだってな

病気と抗がん剤の影響で驚くほど敏感になった肌に床ずれができないよう気遣い向きを変えてあげた時それは起こったそうだよ

異変に気付き台所で天ぷらを揚げているなっちゃんを大声で呼んだそうな

そして二人の目の前でお前は息をすることを静かにやめたんだってさ


↓↓↓

ふく



これは元気だった頃のお前が集に遊んでもらってるとこだよ










あの賢いお前が


あの頑張り屋のお前が


俺の帰りをあと数時間待てなかったほどの苦しみ


旅立つ気持ちを想像するだけで胸が張り裂けそうになるよ









 

【野武屋本店】

 

住 所 千葉県市川市湊新田2-1-18-103

電話番号  080-2014-0544

  

 ☟☟☟

野武屋本店への道のり

 


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